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「半導体産業はニッポンの“生命線”」 東北大学 大見忠弘教授に聞く

ボトルネックは装置メーカーへの過度の依存
300mm製造コスト1/10の新“大見メソッド”
「憂国」の志を持って、「先端性」で勝つ!

 

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 −−現在の日本半導体産業は不況に苦しんでいますが、このままでいいのかとの危機感も感じます。
 大見 日本にとって半導体産業は生命線だ。80年代における“輝ける日本”の躍進を支えた大きな要素の一つは半導体産業の発展であったことを忘れてはならない。しかし、90年代に入って、ニッポン半導体の凋落ぶりは眼をおおうばかりだ。何とかしなければならない。大学と企業のパートナーシップを一刻も早く確立させる以外に、この「未曾有の危機」を救う方法はない。
 −−米国では80年代の終わりにSEMATECHが活動を開始しましたね。
 大見 90年当時、後にベルコア社の社長になったTIの筆頭副社長、ジョージ・ハイルマイヤーがやって来て語り合ったことがある。彼は当時のSEMATECHがIBMの1MDRAMラインをいかに効率よく稼働させるかについて開発を進めていたのに対し「そんなことはやめて、大見教授がやっているようなことをSEMATECHも開発すべきであると申し入れている」といって帰っていった。
 そして、初代会長のロバート・ノイスから次のビル・スペンサー会長になってSEMATECHはすっかり変わった。彼も私のやっていることを知りたいと言って九一年に訪ねてきた。当時私は0.1μm時代のプロセス全般とそれに不可欠な基盤技術を研究していたが、私の話を聞きSEMATECHも既存装置の改良から長期的視野にたった0.1μm時代の基盤技術の開発をやるようになりSEMATECHの求心力は強くなった。
 そのころから5人、10人と私の研究室にSEMATECHの諸君が訪ねてくるようになった。特に、同一業種の複数の企業が同じ研究室で同じ分野の研究をどうやれば一緒にやっていけるのかを勉強するためであった。
 −−日本は製造技術では世界一だと信じてきましたが、マイクロンや台湾メーカーに負けたのはまさしく製造技術ではと思います。工場における弱体化が日本の半導体のボトルネックになるようにも見えます。
 大見 その原因はひとつだと思う。装置メーカーへの依存が進んでしまったことだ。半導体メーカーの中には工夫をして装置を使っている人もいるが、装置メーカーに依存する傾向はますます強まっている。自らが装置、部品、材料を作り、どこが弱いかを知り、それを改善していく日々の努力が必要だ。
 −−日本が優位に立つための対策は。
 大見 装置を買えば同じ性能の生産ラインができてしまうなら、人件費、土地代、水、電力などの安い国にかなうわけがない。半導体メーカーや大学などが装置メーカーと一体となって装置生産ラインを開発し、その中に共同のパテントをインプリメントする。共同した国内企業にはクロスライセンスなどで対応し、海外メーカーには少し高いパテント料を払ってもらうなどの策が必要ではないか。
 −−国内ではこれまでにロームのライン構築に貢献されたようですね。
 大見 80年代にインテル、AMDが私の研究を生産現場に取り入れラインを構築して成功した。それは、テストランをやらず、工場を立ち上げたら即量産開始という画期的なテクノロジーを取り入れたのだ。しかし、日本のロームの姿勢はさらに徹底したものだった。東北大学のラボを作る時に、私に仕込まれた設計・施工のプロジェクトメンバーを京都にそっくり連れていった。半導体産業は総合技術の典型であり、私の言うことをつまみ食いしても効果は出ない。1カ所でも悪ければ、他がどんなによくても成果は出ない。ロームは徹底的にやり遂げた。当然のことながら、この市況低迷下で、ロームは一人気を吐き、最高の利益をあげている。
 −−「大見メソッド」は日本より海外での貢献が大ともいわれますが。
 大見 私は自分の技術を押し付ける気はない。米国、台湾、韓国のメーカーは真正面から私に指導を依頼してきたわけで、それに応えた結果がそうなっているだけだ。業界に役立つ次の世代の実用化技術を頑張って開発しているのであり、必要な時は使って下さいというスタンスでやっている。研究成果の最初のパブリッシュは必ず日本で行っている。現在、国内でも5社から協力の依頼がある。
 −−先日、300mm時代の製造コストを10分の1にできると発表されましたね。そのポイントは。
 大見 装置面積の削減などによるラインコンストラクションの低減、パイロット・モニターウエハーを必要なくしたこと、稼働率を2倍に向上したこと、プロセスステップ数を削減することなどで10分の1以下のコストダウンを達成できる。これに洗浄工程の削減によるプロセスステップ数の簡素化、バーンイン工程をなくすことなどを加えればさらにコスト削減が可能になる。
 また装置開発では、ゲートバルブが必要ないため低コスト化が図れ、完全軸対称チャンバーによる均一な高密度プラズマを実現することにより、ウエハーの回転機構などの不要な簡素化されたクラスターツールを開発した。しかも縦方向に集積化したことでフットプリントの極小化、高スループットも実現した。
 −−ガスの制御技術や洗浄技術も重要ですね。
 大見 ガスの制御は枚葉式装置で特にプロセスガスの流し始めの過渡状態が課題になるが、圧力型流量制御技術を開発したことでプロセス開始から終了時までウエハー表面上の複数のガスの成分比および圧力を完全に制御することができ、パイロット・モニターウエハーをゼロにすることが可能になったほか、初回ロットから高歩留りを実現できる。洗浄も5工程に削減しコスト削減を図った。
 −−こうした新たな「大見メソッド」がニッポン半導体の再興隆に貢献できるといいですね。
 大見 ニッポン半導体の危急存亡の時に、日本人である私が「憂国の志」を持たないわけがない。日本は、一刻も早く、世界を完全にリードするプロセス技術、製造ラインで先行し、その「先端性」で勝っていかなければならない。
(聞き手・本紙編集部)

(注)半導体産業新聞は、7月24日(金)、東京・市ヶ谷においてセミナー「大見忠弘教授が提唱する、生き残り、発展する半導体工場のあるべき姿」を開催します。

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