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明るさ戻ったLCD市場
需給改善の見通しも、進む業界の構造変化/生き残り賭け明確な事業展開を
長銀総合研究所 産業調査部 川北 眞史
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液晶ディスプレイ(LCD)市場に、ようやく明るさが戻ってきた。主力製品のTFT−LCD生産ラインは、多くのメーカーで、既にフル稼働となっているとみられる。
TFTを中心にLCD業界は、昨夏以降、供給過剰に陥り、急速で大幅なパネル価格の低下に苦しめられてきた。しかし、ここへ来て、(1)堅調なノートPC市場、(2)ノートPCメーカーの在庫整理の完了、(3)市況軟化からTFTとSTNとの価格差縮小によるTFTパネルへの需要再シフトなどから、需給にタイト感が出てきたのだ。
もともとLCD市場では、半導体のシリコンサイクルと同様、クリスタルサイクルと呼ばれる需給変動が繰り返されてきた(図)。その平均的な周期は、ピーク(山)からボトム(谷)までが4四半期、谷から山までが4四半期強で全体として2年強となる。これを96年の第4四半期がピークと考えられる今回のサイクルにあてはめると、97年第4四半期あたりが谷になる。事実、液晶素子生産額の四半期別前年同期比増減率は、同四半期を底に立ち直り始めており、今回のサイクルの谷が昨年末頃だと言っても良さそうだ。
ただ、今回、上昇サイクルの立ち上がりの勢いは、過去に比べ極めて弱い。しかも、これまでのサイクルにあてはめると、今回のピークは今年末頃になり、好況感の乏しいまま、クリスタルサイクルの下降局面を迎えてしまうことも懸念される。
大型基板対応の設備投資計画目白押しの台湾が、TFT-LCD事業へ本格参入することを考えれば、今後、LCD市況に関して、悲観的な見方にもなる。しかし、状況は、必ずしも悪くなさそうだ。LCD事業を、数ある投資分野の一つと考える台湾では、現在の採算割れの状況などから、投資計画の中止や延期の動きが出てきている。もともと、大半のLCD事業への参入計画が、昨春までの需給タイト期に発表されており、その後の市況悪化で、投資を躊躇する企業が出ても不思議ではない。しかも、台湾では、大画面TFT-LCDに関する技術が不足しており、技術に加え、販路を、ある程度確保できる日本メーカーなどとの提携がなければ、事業化が困難だと言える。現在のLCD製造装置メーカーへの発注状況を考えても、今世紀中に稼働する台湾のラインは、多くても3、4本であろう。一方、日本のライバルに成長しつつある韓国メーカーは、経済危機の影響から、とても新規投資を行える状況にない。さらに、日本メーカーも、半導体事業の不振などによる業績の一段の悪化から、LCD事業の設備投資は大幅に削減される見通しだ。このため、当面、パネル供給能力が急増するとは考え難い。
これに対して、パネル需要は、堅調なノートPC市場に加え、低価格化などを起爆剤に今年末にかけて、LCDモニタ市場が本格的に立ち上がる可能性が高く、引き続き増加しよう。これらを考えれば、クリスタルサイクルは過去の周期と異なり、上昇局面が比較的長続きすると考えられる。その後、需給変動はあっても、80年代半ばから90年代初のように落ち込みは、比較的小さいとみても良さそうだ。
このような需給改善を受け、パネル価格の下落に歯止めがかかり出してきた。ただ、一度低下したパネル価格は、PCの低価格化の進展もあり、需給が多少タイトになっても急上昇するとは考え難い。また、パネルメーカーにとって、今回は、これまでのようにパネルサイズの世代交代によって販売単価を上昇させるという戦略をとり難い。それは、ノートPCのA4というサイズを考えれば、13.3インチで大画面化の限界に近づくとみられるからだ。このため、これまでパネルの最大の需要分野であったノートPC向けパネルは、早晩、汎用品化し、薄利多売の事業にならざるを得ない。また、今後、市場拡大が期待されるモニタ向けパネルも、当面は14や15インチが中心となり、差別化の困難なパネルになる可能性が高く、しかも、CRTとの競合から低価格が求められる。
このようなことを考えると、モニタ用を含めたPC向け大画面パネル市場では、量産能力のあるメーカーしか生き残れないと言える。その意味で、第3世代や第3.5世代設備の投資を行っていないメーカーは、この市場から脱落する可能性が高い。経済危機から財閥再編成に動く韓国メーカーや、日本メーカーの中に、早晩、大画面パネル市場から撤退する企業が出て来よう。つまり、技術や販路の多くを提携先に依存する台湾メーカーは、既存メーカーの内数と考えられることから、同市場の参入企業数が実質的に減少することになる。この結果、販売の過当競争が改善され、少なくとも、現在の採算割れの状況は解消されよう。
一方、大画面パネル市場からの撤退は、必ずしも、TFT-LCD事業からの脱落を意味しない。今後、ITS(Intelligent
Transport System)への進化が期待されるカーナビに加え、携帯情報端末など中小画面パネル需要も一段と拡大すると予想される。これらの市場では、反射型、低温ポリシリコンや強誘電体液晶など、それぞれの用途に応じて、パネルの差別化が必要となる。一方、必ずしも、大型基板に対応した生産設備は求められない。つまり、大画面パネルから撤退しても、このような市場での生き残りは十分可能だと言える。
今後、しばらく続くと予想される需給回復は、各メーカーの事業戦略の見直しなどを後押しをすることになる。21世紀に向けて、業界地図が本格的に変化することになろう。
詳しい統計資料を下記アクロバットファイルで添付いたしました。
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液晶素子の四半期別生産額対前年同期比増減額の推移
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