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半導体市場「どん底」も、来期好転
メモリーは来年7月にも一気に品不足、いまこそ必要な「選択と集中」

特別インタビュー/IDC Japan(株)

コンポーネントセミコンダクターリサーチディレクター シニアアナリスト 南川 明氏に聞く

scn1306-011.jpg (14415 バイト)  南川 明氏

 半導体市場はまさにどん底の低迷に喘いでいる。このままでいけば、98年の世界市場は9〜10%の前年比マイナスになるとの予測も強く、いまだメモリー比率の強い日本メーカーは、さらにこれを下回るマイナス成長の可能性も出てきた。大手各メーカーの苦悩の色は濃い。日立は98年度で半導体部門で1200億円の赤字、三菱電機も約600億円の赤字が予想されている。バランス展開で強いといわれるNECですら、半導体悪化の影響で9月中間期連結では200億円の赤字となる見通しだ。こうしたどん底の市況下で、ニッポン半導体はいまどこに向かうべきか、市況はいつ回復するか、などについて、国内でも有数のアナリスト、IDCJapanの南川 明氏に少し話を伺ってみた。

 −−まさにどしゃ降りの半導体市況ですが、世界市場の当面の見通しは。
 南川 98年の世界半導体市場は、微減の1340億ドル程度に考えていたが、引き続いてのメモリー価格の低迷、MPUなどロジックにも波及してきた価格急落が影響し、前年実績の1370億ドルに対し、9〜10%のマイナス成長は避けられない、との予測になりつつある。ただし、99年は前年比プラス10%の成長は見込まれ、少なくとも97年程度の水準には戻すだろう。
 −−ここまで市況が悪化した最大の原因は。
 南川 大局的には、半導体はいまや世界経済のリセッションに直撃されるため、伸び悩むのは仕方ない。しかし、現在のようなどしゃ降り状況を招いた原因は、半導体メーカー自身の戦略の誤りにもあるだろう。それは一言でいえば、パソコンはもはや半導体市場の強い牽引役ではない、ということにもっと早く気付くべきだった。確かにパソコンは台数で年率12%くらいの成長を続けてきたが、低価格化の波は急速に訪れた。いまやデスクトップに限っていえば、97年で1500ドル以下のパソコンの比率は45%に達しており、1台当たりに使う半導体の金額は激減している。パソコン1台当たりの半導体搭載金額は単価の約20%前後で、パソコン10万円時代には、1台当たり2万円くらいしか半導体には使ってくれない。台数の伸びで金額急降下をカバーできない。
 IDCの予測では、パソコン向け半導体は99年以降もわずかに伸びる程度で、2001年でようやく95年水準に並ぶ程度だ。
 −−そうなるとやはりパソコン以外のリード役を探さないといけませんね。
 南川 そこが重要なところだ。情報家電が新たなリード役となることは間違いない。情報家電は、先ごろ発表されたIDCのセット市場の予測においても、2001年で台数ベースでパソコンに並ぶとされている。もちろん、情報家電で勝つにはシステムLSIをどれだけ早く安く立ち上げられるかが、重要だろう。また、自動車向けの半導体も、今後急成長が期待される。これまで自動車1台当たり1%の搭載にとどまっていた半導体の金額は、ここ5年くらいの間に3%の金額にまで伸びることが予想され、ここも将来大きな市場が望まれる。ICカードもいよいよ大ロットの時代だろう。
 −−日本の半導体各社は設備投資を一気に大幅減速しましたが。
 南川 日立、三菱、富士通、松下電子など、各社が一斉に欧米工場の閉鎖に走り、国内メーカーの設備投資も前年比30〜40%減に急降下すると、かなり心配されることがある。それは、パソコンや先端情報機器のデザインが0.21μm以下で進んでいることに、早晩設備的に対応できなくなることだ。横並びで日本メーカーは投資を圧縮しているが、いかがなものかと思う。
 例えば、米国マイクロンは、このどん底の市況下で一気に投資を再開した。98年はアイダホ工場だけで10億ドルを投入、99年も10億ドル以上をやる予定だ。0.18、0.21、0.25μmの各デザインルールに一気にシフトアップする。マイクロンはこのほかTIから手に入れた3つの工場があり、こちらも10億ドル以上を投じてリニューアルする計画だ。こうした積極投資再開で、99年度末にはマイクロンは新ラインだけで64MDRAM換算、月産2500万個の能力を備え、既存ラインと合わせれば同4000万個の巨大キャパを持つ。日韓のメーカーが一気にメモリー投資を減速するのに対し、マイクロンがこうした積極姿勢に転じているのは、要するに物が足りなくなると予測するからだ。
 −−DRAMの品不足が来るというわけですね。
 南川 そのとおりだ。少なくとも99年第3四半期には各社がフルキャパで動かしたとしてもDRAMは足りなくなる。確かにパソコンの低価格化は進むが、1台当たりのメモリー容量は98年の64MBに対し、99年は一気に倍増の128MBにまで上がる。
 −−日本メーカーもリストラ策を開始しましたね。
 南川 正直言ってこの程度のリストラでは抜本的改革はできないだろう。欧米メーカーは収益最優先の法則で、設備にも人にも手を付けていく。はっきり言わせてもらえば、日本もコストで勝ちたいならいまの半導体に従事している人数を半分くらいにシュリンクすべきだ。人に手を付けない改革などない。また、製品戦略的には、その分野で少なくとも3〜4位くらいまでのシェアを取れないような製品は切り捨てるべきだろう。日本メーカー同士のM&Aも必要だろうし、外国メーカーと提携するという手もある。「選択と集中」こそが勝利の鍵であり、あれもこれもと社内に利益を生まないセクションを抱えている限り、真の改革はなされないだろう。
 −−シェア重視から収益重視に転換が必要ですね。
 南川 一体に日本メーカーは自社の株価と収益性に関心がなさ過ぎた。日本の半導体メーカーで世界の投資家から最も評価されているのは、売上高たかだか3000億円のロームだという事実に気が付くべきだ。ロームの株式時価総額は1兆5457億円で、NEC、三菱電機を上回っている。これもすべてロームの収益性、ROEが素晴らしい数字を出しているからだ。
 −−半導体製造装置市場も過去最低水準ですね。
 南川 確かに装置全体でBBレシオは97年初頭から連続して大きく下がってきた。とりわけ前工程の落ち込みがひどい。半導体製造装置のBBレシオは現在は0.65まで落ちているが、これも下げ止まりとみるべきだろう。SEMIでは装置市場は99年初めには上向くとアナウンスし始めている。世界全体の半導体設備投資は97年で372億ドル、98年はおそらく約20%減の300億ドル弱まで後退するだろう。しかし、いわゆる投資過剰の96年のつけはいまようやく解消されつつあり、99年の投資は横這いからやや増となり、2000年には96年水準の424億ドルをさらに上回るだろう。この関係で、来年初頭になれば明らかに装置市場は動きが出てくるだろう。
(聞き手=本紙編集長・泉谷 渉)


パソコン向け半導体の生産推移と予想(世界ベース)(出典:IDC Japan)
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